MARC BOLAN
マーク・ボラン

1947 - 1977





数あるロックの星の中でひときわ妖しく光る星、それがマーク・ボランであると思う。

彼の死を私は悲運とは思わない。

何か大きな魔法を掛けるための儀式だったのでは?とも思える。

友人がこんな事を以前言っていた。

「マーク・ボランの事を考えると『(映画)魔界天生』をなぜか思い出すんだよね」と。

私はナルホドと思いながら話を聞いていた。

彼が感じていることは、私も同様に思っていた。

マーク・ボランはエルビス・プレスリーが亡くなった丁度一ヶ月後、この世を去った。

今回は偉大な魔法使い、マーク・ボランの話である。



BIOGRAPHY
DISCOGRAPHY




- ティラノサウルス・レックス -


『我が人民は公平であった、そして、彼らは髪の中に空を持った。しかし、今、彼らは彼らの額の上に星を飾ることで甘んじている・・・』

これは記念すべきティラノサウルス・レックスのファースト・アルバムのタイトルを直訳したものである。

日本では邦題に『アート・ロックの異色』とされて1969年5月に発売された。

タイトルや邦題からも判るように、当時はヒッピー、フラワー・ムーブメントの時代であり、マークもそれらの影響を充分に受けていたと判る曲であり、タイトルである。

難解な歌詞が多いのだが、当時のヒッピー・カルチャーの中で人気のあった作家、ルイスやトルーキン等の影響が見られる。

(バイオのスティーブ・ペレグリン・トックの命名の項参照)

難解な歌詞に反してシンプルな音。

アコースティックにパーカッション、ちなみにファースト・アルバムの制作費は100ドル(アメリカの雑誌の資料なのでドル換算)だったといわれている。

しかし、ティラノサウルス・レックスの音楽はT−REXよりディープだと思う。

先の友人の言葉「魔界天生を思い出す・・」というのは、友人がティラノサウルス・レックスから得ているイメージと、後で書くがマークの予言によるものだろう。




- T−REX -


T−REXと聞けば、「ゲット・イット・オン」や「テレグラム・サム」などのキャッチーなヒット曲を連想をするのだが、名義がT−REXに変わった初のアルバム「T−REX」では、まだ、どちらかというとタィラノサウルス・レックスの世界観が強い。

ただ、ジャケットに写るマークとミッキーが薄く化粧をしている。

当時、これはかなりの話題になったらしい。
今でこそロック・バンドが化粧をするのは当たり前であるが、まだグラム・ロック前夜であった時代には事件だったようだ。

この後グラム・ロックというムーブメントが起こり、化粧をしてロックをするのをグラム・ロック(グラマラスなロックと思えば良い)と言うようになるのだが、そこには音楽性によるカテゴリーは存在しない。

デビッド・ボウイ、ロキシー・ミュージック、モット・ザ・フープル、アリス・クーパー、ゲイリー・グリッター、などがグラム・ロックと言われたが、音楽面は異質な物である。

一般にT−REXとティラノ・サウルス・レックスの違いはエレキギターかアコースティックと言われている。

で、そのT−REX時代のマークのエレキギターなのだが、パリで魔法使いから魔法、呪術、錬金術を修行した時のように、今度はエレキの神様の元で修行している。

エリック・クラプトン
である。

69年の終わり頃に神様の家に住みついて修行をした(らしい)。

「ミッドナイト」などの曲を聞くと、そうなのかな?とは思うのであるが、神様は弟子の事について黙されたままである。

また、フロ&エディーのヘンテコリンなコーラスが聴かれ出すのは、「栄光のT−REX」の後ぐらいから。

このコーラスもT−REXの音楽を幻想的なものにしている要因の一つであろう。


いずれにしても、マークの子供の頃からの「アイドルになりたい」という夢はT−REXによって叶えられたのです。

日本においても凄い人気だった。

初来日の武道館で「マークの化粧に時間が掛かっています。もう少しお待ちください。」というアナウンスで場内が沸いたらしい。

本当はショーの直前に地震が有り、マークがビビって、ショーを中止にするとゴネた為に時間をとってしまったらしいのだが。

ライブの内容はヘタ過ぎて、レコードの音とはかけ離れていたらしい。


リンゴ・スターも「ビートルズの次はT−REX」と惚れ込み、リンゴ自らメガホンを取り、アップル・フィルムより「ボーン・トゥ・ブギー」という映画も出している。





−映画「ボーン・トゥ・ブギー」−


発表当時、ビートルズの「マジカル・ミステリー・ツアー」の亜流と言われていた。

しかし実際には作品自体は抽象的で、その様な感じは有るが、決定的に違うのは演奏シーンが多いこと。

しかも、実際のコンサートからのシーンや、この映画のためにアレンジを替えていたりしている。

「マジカル・ミステリー・ツアー」の場合の口パクだけの映画とは違い、この映画だけの音源が多いのがうれしい。

12曲収録だが、一部を紹介。


チルドレン・オブ・レボリューション・・・・・エルトン・ジョンのピアノで始まり、マークのアコースティックが被ってきて、一転エレキ・ギターに替わりバンドで演奏。リンゴもドラムで参加。


テレグレム・サム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・コンサートからの映像だが、何がスゴイって、あの有名なリフの音がレコードと違う。
5カポでプレイしていたのは知らなかったので驚きだが、マークの曲紹介が無かったら、新曲か?と思うほど。
しかも、それが新鮮でカッコイイ!

ジープ・スター〜ホット・ラブ〜
ゲット・イット・オン〜ザ・スライダー・・・・・ジョン・レノン邸の庭で演奏。マークのアコースティックにストリングスのメドレー。

ゲット・イット・オン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・これもコンサートから。ストラトで始まり、間奏はマークがミッキーと並んでパーカッションを叩く。
次にタンバリンをピックにしてギ゛ターを弾き倒し、レスポールに持ち替え、ギターのアドリブ。
で、やっと曲に戻る。10分以上の「ゲット・イット・オン」。カッコよすぎる。




- トニー・ヴィスコンティ -


ビートルズにジョージ・マーチンがいたように、ティラノサウルス・レックス及びT−REXにも優秀なプロデューサーがいた。

それがトニー・ヴィスコンティである。

マークは自分の狙いどうりの音の出せるプロデューサーを探していた。で狙いを付けたのが、当時20歳のトニーである。

トニーとの関係は「ズィンク・アロイと朝焼けの仮面ライダー」まで続くのである。

このトニーの名前を聞いてピンと来る人は結構ロックオタク。

T−REX以外の仕事をあげておけば、ジ・アイビーズ(後のバッド・フィンガー)、デビッド・ボウイ、プロコル・ハルム、シン・リジーなどの作品で名前を見ることが出来る。

ウイングスの「バンド・オン・ザ・ラン」の仰々しいオーケストラもトニー・ヴィスコンティの手による物である。

EMI傘下のリーガル・ゾノフォーンからティラノザウルス・レックスをデビューさせたのも、この人である。




- ゴッドファーザー・オブ・パンク -


グラム・ロック・ブームが去り、パンク・ブームが到来した。

パンク・ミュージシャンらのリスペクトを受けて、マーク・ボランがロック・シーンで再評価を集め、心機一転したマークの新たなる活躍が始まろうとしていた。

77年9月16日の早朝、ロンドン市内ウエストサウス地区の路上で、グロリア・ジョーンズの運転する、紫のブリティッシュ・レイランド/275Gは木立に激突した。

同乗のマークは帰らぬ人となった。

死因は脳挫傷による出血多量だが、その時彼の血管は大量のドラッグ使用の為にボロボロに破壊されていたという。

9月30日の30歳の誕生日の2週間前であった。

生前マークは母親に「僕は30歳の誕生日を迎える前に、魔女に導かれ、体が粉々になって死ぬんだ」と語っており、そして、その予言は的中した。

マークの死後12日後に放映されたテレビ番組「マーク」はその最終回をオン・エアした。

マークの映った画面には、「ゴッドファーザー・オブ・パンク」とテロップが書かれていた。




- 最後に -


最初に書いたように、私はマークの死を悲運とは思わない。

もし、貴方が「100歳まで生きる」という事を人生の目標としていて、99歳で死んだのなら悲運である。

ジョン・レノンにしても「スターティング・オーバー」と言った矢先に凶弾に倒れた。

ジョンの人生の目標は、まだ達成されていなかった筈であり、これは悲運である。

ジョージ・ハリスン、ミック・ロンソンなども自分の死を覚悟して、死の間際まで死を見つめながら仕事をしていたのだが、マークの場合は異質である。

「30歳まで生きれない」と予言。

で、事故による死。この事がマークのカリスマ性を高めているのは確かだし、今もってT−REXのCDが売れている要因になっている事は否めない。

ジョージ・ハリスンが自分の死期を見つめて、ブッダのような心境で死を迎えたのとは違い、マークの場合は黒魔術的な物を感じるのは、私だけではないだろう。

いずれにしても、自分の人生の目標としていたロック・スターにもなり、自分の死期も予言どうりとなった訳であるから、人生の成功者というしかない。だから悲運ではないのである。

また、自分の寿命が短いと知っていたからこそ、刹那とも思えるマークのライフ・スタイルが魅力的だった。

存命中は只の誇大妄想家と思われても。


「彼こそはロッカーである」と言い切れない部分が多い。

いや、これは音楽的にどうのという話では無い。もっと大きな力が働いているような気がする。

今回、改めてマークの音楽をティラノサウルス・レックス時代から聴いたのだが、自分としてはちゃんと自分の好みの音楽を見分ける耳は持っているつもりである。

正直、コマーシャルなどで使われるT−REXの曲など嫌いな部類のハズである。

しかし、あのリフが耳に残り、ビブラートの掛かったボーカルが頭を離れない。

やはりコレはマークの魔法に掛かっている、としか言いようがない。

彼こそは20世紀で一番、ロックという呪文を唱えた魔法使いである。

「魔術、呪術、錬金術をマスターした」というマークの言葉は本当なのである。



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